目次
- 1 間伐材をペレットに加工して、ストーブの燃料として使うーーそんなエコな暖房が人気を集めている。国内有数の洋食器などの金属加工製品の生産地・新潟県燕市では、約80社の地元製造業者らが協力してストーブを製造し、全国販売するビジネスに成長した。間伐材を有効利用することで環境に優しく、地域産業の活性化にも一役買っている。
- 2 間伐材を有効利用。灯油の代替燃料として利用拡大
- 3 森は間伐を行わないと内部に光が差し込まず、下草や樹木が成長できないためいずれ荒廃していく。適度に人が間伐を行うことで、人と森は古来から共生してきたが、木材価格の低迷を背景に人手が入らなくなったことで間伐が行われず、森林の荒廃につながることが全国で懸念されている。
- 4 新潟県新潟市のさいかい産業(山後春信社長)がペレットストーブ事業を開始したのは2009年。09年に約450台だった販売台数は、これまでに北海道から九州まで累計6000台。12年に約800台に倍増し、13年に1600台、昨年は2200台と右肩上がりで伸びている。
- 5 エコストーブの燃料になるのは、間伐材を圧縮してつくる木質ペレットだ。間伐材を有効利用できるのに加え、火力が強く灰も少ないため、扱いやすく使い勝手が良い。そして、灯油と木材ペレットを比較すると、コスト、温かさもほぼ同等。補助金が整備されたり、燃料費も灯油と同等という点も、人気を後押ししている。
- 6 また、これまで50万円ほどだったペレットストーブの価格が約半分になり、購入しやすくなったことや、新潟市内などでは燃料となるペレットがガソリンスタンドやホームセンターなどで売られるようになり、手に入りやすくなったのが大きいという。
- 7 新潟県燕市の約80社の地元製造業者が協力して製品化
- 8 同社の一般家庭向けのFF式温風ファンヒーターの連続燃焼時間は、10キロ袋で6~20時間。外に逃がす熱を最小限に迎える高い暖房力があり、扉に鋳物を使用することでやけど防止などの安全性にも配慮している。家庭向け製品から、東北大震災時に現地に届けた実績があり、体育館や公民館など260平方メートルの広さにも対応できる大型ストーブまでバリエーションも豊富だ。
- 9 製造には製造・販売を行う信越ワークス(新潟県燕市)を中心に、新潟県燕市内の金属加工、板金など中小製造業者80社が参加している。もともと同社も金網加工で創業し、アウトドア用品メーカーとして事業を拡大してきた。ペレットストーブへの本格参入は、もともと、地産地消のご当地エネルギーを作ろうと、ペレットやストーブを一人で製造・開発に取り組んでいた古川正司さん(現さいかい産業・取締役)に出会い、意気投合したのがきっかけだった。
- 10 年間1万台の生産目指し、新工場完成
- 11 環境への意識が高いヨーロッパでは、木質ペレットストーブは以前からポピュラーなアイテム。フランスやイタリアなどでは各家庭に大きなペレット用のタンクがあり、わざわざ燃料を入れる手間が必要なく自動的に充填される仕様になっており、生活に浸透した身近な暖房設備として普及しているという。好調な売れ行きを背景に、今後、日本でも広がっていくと見て、同社では敷地内に今年2月、延べ床面積3300平方メートルの新工場を建設。今後、年間1万台の出荷を目指す。
- 12 「始めは『ペレットストーブなんて売れるの?』と協力会社の人たちも疑心暗鬼だったが、今では『うちの会社にも、やらせて欲しい』という声も聞かれるようになった。製造業が集積する街なので車で10分も走れば、どんな加工でも対応できる製造業者が揃い、『こういうのが出来ないだろうか』という相談ができ、また、皆で協力してやっていこうという雰囲気もある。皆で良くなっていければいい」と取締役の今井敏昭さん。
- 13 部品の点数を減らすなどのコストダウン、発電機能を搭載した製品の開発、パネルヒーティングへの応用など、さらなる性能向上を目指し、製品開発を進めている。また、海外ではペレットを運搬する道具や、専用の掃除機なども豊富にあるといい、関連産業の裾野も広いようだ。
- 14 アフターフォロー重視。販売代理店を設け全国展開へ
- 15 ストーブを設置するには、外部につながる排気口の設置が欠かせない。安全性に配慮した工事が必要で、アフターフォローにも対応するため、全国に販売代理店を設け、取り付け工事、燃料の販売、修理などの対応を行っている。そのため、実際に利用される冬のシーズンに向けて、これから販売、取り付け工事が本格的に始まる。
- 16 「これまでやっかいものとされてきた間伐材を有効に利用でき、地産地消、環境保全に貢献できる製品。ヨーロッパが進んでいるが、日本に合った独自の製品作りを目指すとともに、製品安全性の啓蒙などに努め、販売代理店と協力しながら全国に広めていきたい」と今井さんは言う。
- 17 暖炉の火は、人の心にもぬくもりをもたらす。夕暮れ時は、火の明かりを見てゆっくり過ごす。将来、そんな優雅なひと時を過ごすことが、人々の憧れになる日が来るかもしれない。
- 18 燃料となる間伐材はタダだ。地域に眠った資源をエネルギーとして有効利用できる上、環境への不可も少ない。将来的には、国内屈指と言われる燕市の職人技を活かした製品が誕生する可能性もある。森を元気にし、人も街も元気にする、地球に優しいビジネスの今後が注目される。(ライター 橋本滋)
間伐材をペレットに加工して、ストーブの燃料として使うーーそんなエコな暖房が人気を集めている。国内有数の洋食器などの金属加工製品の生産地・新潟県燕市では、約80社の地元製造業者らが協力してストーブを製造し、全国販売するビジネスに成長した。間伐材を有効利用することで環境に優しく、地域産業の活性化にも一役買っている。
間伐材を有効利用。灯油の代替燃料として利用拡大
森は間伐を行わないと内部に光が差し込まず、下草や樹木が成長できないためいずれ荒廃していく。適度に人が間伐を行うことで、人と森は古来から共生してきたが、木材価格の低迷を背景に人手が入らなくなったことで間伐が行われず、森林の荒廃につながることが全国で懸念されている。
新潟県新潟市のさいかい産業(山後春信社長)がペレットストーブ事業を開始したのは2009年。09年に約450台だった販売台数は、これまでに北海道から九州まで累計6000台。12年に約800台に倍増し、13年に1600台、昨年は2200台と右肩上がりで伸びている。
エコストーブの燃料になるのは、間伐材を圧縮してつくる木質ペレットだ。間伐材を有効利用できるのに加え、火力が強く灰も少ないため、扱いやすく使い勝手が良い。そして、灯油と木材ペレットを比較すると、コスト、温かさもほぼ同等。補助金が整備されたり、燃料費も灯油と同等という点も、人気を後押ししている。
また、これまで50万円ほどだったペレットストーブの価格が約半分になり、購入しやすくなったことや、新潟市内などでは燃料となるペレットがガソリンスタンドやホームセンターなどで売られるようになり、手に入りやすくなったのが大きいという。
新潟県燕市の約80社の地元製造業者が協力して製品化
同社の一般家庭向けのFF式温風ファンヒーターの連続燃焼時間は、10キロ袋で6~20時間。外に逃がす熱を最小限に迎える高い暖房力があり、扉に鋳物を使用することでやけど防止などの安全性にも配慮している。家庭向け製品から、東北大震災時に現地に届けた実績があり、体育館や公民館など260平方メートルの広さにも対応できる大型ストーブまでバリエーションも豊富だ。
製造には製造・販売を行う信越ワークス(新潟県燕市)を中心に、新潟県燕市内の金属加工、板金など中小製造業者80社が参加している。もともと同社も金網加工で創業し、アウトドア用品メーカーとして事業を拡大してきた。ペレットストーブへの本格参入は、もともと、地産地消のご当地エネルギーを作ろうと、ペレットやストーブを一人で製造・開発に取り組んでいた古川正司さん(現さいかい産業・取締役)に出会い、意気投合したのがきっかけだった。
年間1万台の生産目指し、新工場完成
環境への意識が高いヨーロッパでは、木質ペレットストーブは以前からポピュラーなアイテム。フランスやイタリアなどでは各家庭に大きなペレット用のタンクがあり、わざわざ燃料を入れる手間が必要なく自動的に充填される仕様になっており、生活に浸透した身近な暖房設備として普及しているという。好調な売れ行きを背景に、今後、日本でも広がっていくと見て、同社では敷地内に今年2月、延べ床面積3300平方メートルの新工場を建設。今後、年間1万台の出荷を目指す。
「始めは『ペレットストーブなんて売れるの?』と協力会社の人たちも疑心暗鬼だったが、今では『うちの会社にも、やらせて欲しい』という声も聞かれるようになった。製造業が集積する街なので車で10分も走れば、どんな加工でも対応できる製造業者が揃い、『こういうのが出来ないだろうか』という相談ができ、また、皆で協力してやっていこうという雰囲気もある。皆で良くなっていければいい」と取締役の今井敏昭さん。
部品の点数を減らすなどのコストダウン、発電機能を搭載した製品の開発、パネルヒーティングへの応用など、さらなる性能向上を目指し、製品開発を進めている。また、海外ではペレットを運搬する道具や、専用の掃除機なども豊富にあるといい、関連産業の裾野も広いようだ。